ご存知でしたか? 車椅子で参詣できる「バリアフリー清水寺」(2012.0717)
「人間の尊厳を守っていきたい」上野先生に聞く、発明の根本
上野先生(奥)の研究所を訪ね、貴重なお話を伺いました。
研究所にある「FUNレストテーブル」。東京の小学校にも導入されたのだそうです。
実際にこの車椅子を使ううちに、寝たきりだったおばあちゃんが、歩行器で歩くほどになった例も。
上野先生は、学生時代に老人ホームの設立に関わり、介護用品や介護システム、施設の作りに至るさまざまなことに疑問を感じられたことがきっかけで、これまでになかった視点での道具や機器の開発を始められました。
FUNレストテーブルは、「おむつを交換する側より、される側のほうがもっと嫌だろう。交換しなくてもよい方法がないか」というところから発案されたそうです。排泄は最も本能に近いプライベートな行為だけに、できる限り人の手を借りたくないもの。「生きる意欲にも関わる、人間の尊厳の分水嶺」とおっしゃいます。
上野先生の研究所にはたくさんの製品を見ることができます。オフィスでよくあるキャスター付の椅子に着想を得たという車椅子は、驚くほどに小さく軽いのに安定感があり、足の裏が地面に付く、ひざの裏に隙間を設ける、椅子の背に、どっかりともたれない設計など、自分で動かし「座って歩く」ために考案された形。ですから車椅子を押すための持ち手もありません。
ほかにも介護しやすい入浴用の椅子や、食事に適した前屈みの姿勢を無理なく作れる椅子、コミュニケーションが自然に良くなるテーブルなど、上野先生が人間生理学、人間工学に基づいた独自の研究から開発された製品は多数。そのすべてが、「身体に不自由な部分があっても、それをカバーする道具があれば、自分でできることが増え、より人間らしく生きていける。」という「自立支援」の考え方に根差したものです。
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