祈り


さま

清水寺が開創されてから1250年余。
京都・東山連峰の一つ、音羽山の中腹に建つ
この寺院には、
大慈大悲をあらわす観音さまを
慕って今も多くの人々が集います。

この世に生を受けたことへの感謝。
平穏な日々への感謝。
周囲の方々への感謝。

観音さまと向き合うことは、
自身の内面を見つめることです。

そして、私たちの営みすべてに
観音さまの慈悲心があることを感じてください。
清水寺は、この世のすべての方々の幸福を
観音さまとともに願っています。
ご参詣の折には、そうしたお心で観音さまに
手を合わせて頂けましたら幸いです。

合掌

清水寺の御本尊清水の観音さんに参る

清水寺は観音さまにお参りする場所です。清水寺の御本尊は、「十一面千手観世音菩薩」。この観音さまは、十一の表情と四十二の手で大きな慈悲をあらわし、人々を苦難から救うといわれています。無病息災や立身出世、良縁といった現世利益を願う人々に篤く信仰されたこともあって、古くから親しみを込めて「清水の観音さん」と呼ばれてきました。

観音さまの別名は「あらゆる方角に顔を向けた者」。生きとし生けるもの全ての求めに応じて、そのお姿を33身に変えて救いの手を差し伸べるといわれています。清水寺でお参りしたお姿だけが観音さまではありません。道ですれ違ったその人が、私たちに正しい生き方を伝えようと姿を変えて出現された観音さまかもしれません。観音さまは遥か遠い世界の存在ではなく、私たちの日常の中におられるのです。

観 音

かん

主観自分自身の心
目には見えないもの

のん

客観周囲や他人
世の中のすべて

「観音」という言葉には、「私とあなた」という意味があります。観音さまは、他人の苦しみや喜びを理解し、世の中を平等な心で観ることが、人間の理想のあり方だと教えてくださっています。人間は誰しも主観で物事を判断しがちです。目に移ることにばかり影響され、他人の心や周囲の変化に気づかないことが多いものです。「心で自由自在に世の中を観る仏」といわれる観音さまは、私たちがふだん区別しがちな主観と客観の両方を、大きな視野で偏りなく観ておられます。

伽藍の風景